我が秘密の生涯』(わがひみつのしょうがい、My Secret Life, The Sex Diary of a Victorian Gentleman)は、1884年‐1894年にベルギーで私家刊行された、英語による自伝風の官能小説、性愛文学である。オリジナル版は11巻、184章、116万6670語で、4,200ページに及ぶ。

作者、すなわち一人称の主人公「ウォルター」(Walter)は、イギリスの実業家でエロティカ蒐集家でもあったヘンリー・スペンサー・アシュビーであるとする説が最有力である。

主人公の性癖とその性的体験の遍歴を幼児期から晩年に至るまで記述した内容で、当時のヨーロッパ、およびヴィクトリア朝時代のイギリス社会の性的側面の実相を社会学的、歴史的につぶさに知ることもできるものである。

出版

『我が秘密の生涯』は、この私家版を入手し、1901年に『性の目覚め』と題して出版したチャールズ・キャリントンによって世に出ることとなるが、キャリントンは別の書籍でこの『性の目覚め』について「金持ちの老イギリス人が自分の楽しみのために厖大な原稿を密かに自費出版したいと言った」と語っている。イアン・ギブソンは自著『エロトマニアック』の中で、こうした事情や、キャリントンがアシュビーのエロティカ蒐集のヨーロッパをつなぐパイプ役として活動を行っていたことや、書誌目録出版の代理人を務めていたことなどの複数の状況証拠から、『我が秘密の生涯』をアシュビーであるとほぼ断定口調で推察している。それ以外の候補としてはアイルランドのジャーナリストであるフランク・ハリスなどの名が挙げられることもあるが、実名としてはアシュビー以外の名が挙げられることはほとんどない。

その猥褻とも受け取ることができる内容から、出版関係者が司直の手にかかるなど、一部で物議を醸した。現在では無削除版を読むことができる。

真偽と評価

内容の真偽については『我が秘密の生涯』の前書きでは事実であると述べられているが、ギブソンをはじめ、フィクションであるという見方が多い。これに対してイギリス文学を研究する小林章夫は自著『エロティックな大英帝国』において「実体験をもとにそれを膨らませて書いたと考えられる」と述べている。

一人の男性の50年にもわたる性描写を淡々と詳細に語るその内容について、開高健は田村隆一訳の『我が秘密の生涯』の解説で「ファーブルがヘミングウェイの文体でセックスを書いたらこうなるだろう」とまとめている。また、『我が秘密の生涯』の無削除版をインターネット上で公開するMy Secret Life­ by Walter[1]では、いかに即物的表現であるかの指標としてカント、ファック、プリックなどの表現をカウントしており、それぞれ、5,357回、4,032回、3,756回という値が提示されている。

目次

以下は、田村隆一による日本語完訳版(學藝書林)と原文の各話目次の一覧である。なお、ダイジェスト版(富士見ロマン文庫)にも収録されている話には*を付す。

第1巻

第2巻

第3巻

第4巻

第5巻

第6巻

第7巻

第8巻

第9巻

第10巻

第11巻

日本語訳

  • 學藝書林 全11巻 完訳 田村隆一訳 1977年
  • 富士見ロマン文庫 上中下 ダイジェスト(約1,500ページ) 田村隆一訳 1982年 ISBN 4829120568, ISBN 4829120576, ISBN 4829120584
  • 河出文庫 全1巻 ダイジェスト(602ページ) 田村隆一訳 1998年 ISBN 4309461859
  • ルー出版 全5巻 佐藤晴夫訳 1997-1998年

脚注

注釈

出典

参考文献

  • Ian Gibson (2001). The Erotomaniac: The Secret Life of Henry Spencer Ashbee. Faber and Faber 
  • 小林章夫『エロティックな大英帝国』平凡社、2010年。ISBN 9784582855296。 

外部リンク

  • My Secret Life by Walter (The Sex Diary of a Victorian Gentleman)

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